
『カレーを食べると「よし! やったるでー!」っていう気持ちになるんです』
渋谷:
松尾さんとお会いするのは3度目で、実は、昨日もお仕事でご一緒させていただいたんですよね。
松尾:
昨日会ったんですよね。で、「明日空いてる?」って言われたんですよね。
渋谷:
そんな唐突な話ではなかったと思うんですけどね(笑)。昨日、カレーの話で盛り上がったじゃないですか。あのあと私、ものすごくカレーが食べたくなってしまって、帰りに厚化粧のままカレーを食べて帰りました(笑)。
松尾:
すいませんねぇ。でもいいんですよ、シメにカレーは。ラーメンよりカレーをおすすめしますから。
渋谷:
でも普通はやっぱりシメは汁物じゃないですか?
松尾:
う〜ん、でもね、やっぱり日本人が持っている原風景の中にあるカレーっていうのは、小麦粉が入ってどろっとしたものですけど、ホントはね、さらっとしたものなんですよ。最近、スープカレーってもてはやされているでしょ?でもああいうのではなくて、さらりとして胃にもたれないっていう爽やかな辛さがあって、カプサイシンで燃焼も早くて…みたいな意外と健康にいいものなんですよ。
渋谷:
さすが松尾さん! カレーの話になると熱くなりますね。
松尾:
やる気が出るものなんですよ、カレーって言うのはね。交感神経が活発に働き始めますから、とにかく「あぁ今日はなんかヤル気がないな〜」っていう時にカレーをサクッと食べると「よし! やったるでー!」っていう気持ちになるんです。
渋谷:
そんな松尾さんは、先月、下北沢に「般°若(パンニャ)」というカレー屋さんをオープンされたんですよね! 昔からカレー屋さんをやりたいって思ってたんですか?
松尾:
そうですね。子どもの頃からの漠然とした夢ではあったんですけど、自分が一番食べたいなって思うような、ほどよいもので、お手軽な感じで、常にカレーがあるっていう環境を作りたかったんですよね。
渋谷:
夢のカレー屋さんですね。
松尾:
また下北沢という場所がお高くないというか、日常的というか、サブカル的というか、そういういきいきとしたリーズナブルなものがたくさんあるじゃないですか。だからイメージがぴったり合って、下北沢にしよう!と。
渋谷:
レシピは松尾さんが生み出したものなんですか?
松尾:生み出したと言いますかね、僕は元々カレーを作る習慣だけがあったんですね。4年に1回くらい。それが毎回、巨大なホームランを打つんですよ。もう自分は天才なんじゃないかと思うくらい。
渋谷:ははは。自画自賛ですね。それでお店をオープンするなんてリクスが高くないですか?(笑)
松尾:それをペースにしてるんですけど、恵比寿に「まはから」っていう洒落たバーがあるんですけど、そこのマスターの渡辺さんと2年前から、試作品を何度も作ってもらって、食べて、アイディアを出しつつ挑戦していたんですよ。で、半年ぐらい前からイイ感じになってきたんですよ。
『こういうことって他の仕事をしている時には無いんですね』
渋谷:
舞台も控えているんですね。『江戸の青空 〜Keep On Shackin'〜』。どんな舞台なんですか?
松尾:
古典落語の中にいくつかの名作があるんですけど、その中に“庶民が大金を手にする”という落語がいくつかあるんですよ。それをサイボーグのようにひとつにくっつけちゃったんです。それで起承転結をきれいに作っちゃったんですよ。
渋谷:
はい。
松尾:
だから落語のストーリーそのままじゃないんですけど、江戸落語の世界の雰囲気で面白い話ができたのでやろうじゃないかと。
渋谷:
へぇー。メンバーはどんな感じなんですか?
松尾:
西岡徳馬さん、吉田鋼太郎さん、須藤理彩さんとか、柳家花緑さんとか、私とか…。
渋谷:
落語となるとセリフの量も多くて難しいんじゃないですか?
松尾:
落語って想像力の世界でしょ。だからお客さんの頭の中で作ってもらうものが9割型なんですけど、舞台となるとセットがあって役者がいて、ロールが割り振られている……、だからお客さんに、落語を聞く時の想像力ではない形の想像力を使ってもらえるようにやらなきゃいけない、それがテーマかもしれませんね。
渋谷:
ほぉー。面白そうですね。松尾さんはいろんなお仕事をされていますが、やはり舞台は欠かせないお仕事ですか?
松尾:
そうですね。できる状況であったり、お話をいただいたら、これは縁だと思って必ず関わるようにするんですね。なんでかって言うと、同じ空間の中に受け手がいて、その人たちの反応や空気みたいなものが舞台上の演者に相乗効果で、いろんなドラマを作るということ…これはものすごく面白い現象がいっぱいあるんですよ。
渋谷:
えぇ。
松尾:
全く昨日と同じような客層で、昨日と同じような天気で、同じ出演者で、同じ脚本でやったとしても、出来、不出来が全く違うんですね。このちょっとした意識のボタンのかけ違えみたいなものが暴走して、また別の魅力を生むことだっていくらでもあるんですよ。こういうことって他の仕事をしている時には無いんですね。
渋谷:
じゃ、舞台に携わっている時は第六感まで……。
松尾:
そうですね。それと心地いい緊張感を長い時間持続させなきゃいけないでしょ?いろんな意味で、表現する人間としてリハビリになるんですよ。自分が普段、意識としては楽な状況で何かをしているっていうところに、別のストレス(緊張感)をかけることで、たまっているストレスも解消できるというね。そういうことが大事だなって。